蛙の子はおたまじゃくし

  • 2020.08.18 Tuesday
  • 07:36

JUGEMテーマ:育児

 

真夜中にファックスの送信音が聞こえてきた。
久しぶり。そう、これこれ。
懐かしさと喜びとがないまぜになって込み上げ、ベッドの上でフフっとちいさな笑いが漏れた。

ファックスの独特な送信音は、なかなか真似できない。
祭囃子をカセットテープに録音して、もう少しグルーブ感がほしいわぁと2倍速で聴きまくり、テープがもう勘弁して下さいよと心の声を上げているのに、巻き戻して執拗に聴く。
テープは伸びてしまったが、最後の力を振り絞ってなんとか祭囃子をお届けする。
「ピーーーェァ〜ヒヤァ〜〜ラァイェ〜ラァ〜〜」くらいのレアな状況にならないと再現できないのではないか。
(この感じがわかったら35歳以上だね)

だから、こんな独特な音が聴こえてきたら、人はファックスを送信している音、とすぐに断定できるのだろう。

ファックスが出回った当初は、文字や絵が電話で送れるなんて、どうなってんのよ、なんか怖いよってくらいの最先端テクノロジーの象徴であった。
初めてファックスと聞いたとき、放送禁止用語の複数形かと一瞬疑ったし、初めて使ったオカンは、何度送っても下から出てくると困っていた。

ようやくファックスの存在に慣れてきた、20代前半のころだった。
真夜中に、「おい、誰かがファックス流してるぞ」という、コビット(だんな)の声で目を覚ました。
「あれ、止まった」耳をすまして警戒しているようだ。
寝ぼけまなこを擦りながら、どうでもいいしと思い、重たい頭を起こすこともできず、また夢の中に吸い込まれた。

「またファックスなってる!
…あれ、止まった」

「もう、なんなの」続けざまに2度も起こされたが、怒る気力が沸いてこないくらい眠い。
「近くで聞こえるから、家の中に誰かがいる気がして…」夢の中でコビットが何か言っている。

 

「なんだよぉ!」


今度は、怒りと笑いを含んだコビットの大声が耳に飛び込んできて、完全に目を覚ました。

「ファックスかと思ってたら、おまえの鼻がピーヒャラなってるだけだった!」

知るか。

そんなことで起こさないでよ。「うるさい!」
「うるさいのは、おまえの鼻だし」


軽くモメてから寝たが、その後もファックスを10枚くらい送信していたらしい。

 


別の日は、こんな 騒動もあった。

「ミ〜ミ〜」
真夜中に子猫の鳴き声で目を覚ました。あれ?すっごく近くにいる!
体を起こすと、子猫はぴたりと鳴き止んだ。
どこだ?


実家に住んでいたころ、飼い猫のミーヤンがクローゼットの中で子猫を2匹生み、人間と猫の2家族で仲睦まじく暮らしていた時期があった。
数日会わないと中毒になるくらい愛しいミーヤンの子、ヤヤとナナ。
それはそれは可愛く、孫が生まれたときの心境がわかった気がした。
だから、子猫特有の鳴き声は身体に染み込んでいる。

その声を久しぶりに耳にし敏感に反応したが、子猫ちゃんは見当たらない。

コビットは穏やかな寝息をたてて寝ていた。
申し訳ないと思ったが、部屋に子猫が紛れ込んでいる一大事なのでゆすり起こす。
「近くに子猫がいるみたい。鳴いてるの」
「え!どこ、どこだ?」
ふだんは声をかけてもなかなか起きないコビットだが、動物が好きなので慌てて起き、いっしょに探してくれた。
毛布をめくったり、本棚の隙間を覗いたり。
お互い寝ぼけていたが、だんだん意識がハッキリしてくると、

「つーか、夢じゃね?家の中に突然子猫が入ってこなくね?」
「そ、そっか」ということになり、また眠りについた。

「なんだよぉ!」
今度は、怒りと笑いを含んだコビットの大声が耳に飛び込んできて、完全に目を覚ました。

「子猫じゃなくて、おまえの鼻がミ〜ミ〜ってなってるだけだぞ」

なんか、これ知ってるぅ〜と思いながら、再び、夢の中に吸い込まれた。

 



真夜中にファックスの送信音が聞こえてきた。
とても、か細く、ちいさな、ちいさな音だった。

ぴぃぃひゃららぁ。

正体はアロハ(むすめ)の鼻息だった。
こんなところが似ちゃって。

懐かしさと喜びとがないまぜになって込み上げ、ベッドの上でフフっとちいさな笑いが漏れた。
アロハの頭をそっとなでる。

「どうした?」コビットも目を覚ました。

「ファックス」

言っても伝わらないかと思ったが、コビットもフフっと笑っていっしょに頭をなでた。
コビットのなでるスピードがじょじょにゆっくりになり、アロハの頭に手を当てたまま、眠ってしまった。

アロハの寝息をもう少し聞いていたい気分だったが、ほどなくしてゴゴゴゴオとコビットのイビキでかき消された。
なんだか雰囲気ぶち壊し。蹴りを入れてやりたいほど、うるさい。

耳障りだったのか、アロハはもぞもぞと動き出し、横向きになると両足をバタバタと前後に振って、コビットの太腿をボコスカ蹴りまくった。
そうかと思えばすぐに爆睡し、またファックスを送り始めた。

こんなところが似ちゃって。

寝ていると鼻がなる、寝相が悪い、いつでもどこでも秒で寝られる、睡眠時間が短くても超元気…。

 

完全なる勇者の遺伝子だね。


SNSやメールでのやりとりが主流の令和の時代だか、我が家はこれからもファックスの送受信でコミュニケーショをとっていこうとおもう。ピーーヒャララ。


にこっ。

愛愛。