煮え湯を飲まされたことにされる

  • 2020.10.31 Saturday
  • 17:09


でね、前回の続きの、飲んだ飲まない事件の話ですが。
こう聞くと、昭和の飲酒検問の話を思い起こす人もいるかもしれませんね。

 

ヒドイよね、あれ。
今でこそ、マイク型のアルコール検査器に息を吹きかけ、呼気に含まれるアルコール反応で白黒つけるわけですが、ふた昔前にもなると警察官が口元に鼻を近づけて匂ったら、車から運転手を降ろし、チョークで書かれた線の上を歩かせて検証するという。

警官といってもオジサンの顔面を口元に近づけられ、どちらかというとそっちの匂いの方がキツイわってこともあったしな。

 

「警察24時」のようなドキュメント番組で、酒気帯び運転の取り締まりの特集を見たときにはコントかと思った。
チョークで書かれた線の上を「まっすぐ歩けるかどうか」が争点となる検問。
ふらつきかけたように見えて持ち直し、うーん、セーフ!!みたいな場面があり、今の時代なら、速攻ラミレス監督がリクエストしてるよね。というか、もう1回歩かせなさい。

 

そうかと思えば、ご機嫌なおっさんが走るように線の上を歩き、「バックもできちゃうよーん」といって、イカ天の相原勇ばりにバックスキップをかまし(大丈夫?平成生まれついてきてる?)、アウトー!!なんてやっていました。
そんな訳で飲んだ、飲んでない、のモメ事が絶えなかったのですが、わたしは一切お酒を飲まないので、そんな事件の話ではありません。

 


わたしがニッタイ大時代に横浜駅近くのスポーツジムでインストラクターのアルバイトをしていたときのこと。


ジムフロアで会員さんにストレッチを教えていたら、尊敬していたフロア責任者のSコーチがものすごい剣幕で歩み寄ってきて、それこそ昭和のヤンキーのようなメンチ切ってきて。
会員さんへのアプローチの仕方が間違っているのとかと動揺しつつも、作り笑顔を崩さず最後の深呼吸までレクチャーしました。
指導をし終えた途端、Sコーチがわたしに、
「おい!口の中に入ってるものを出せ!ガムか飴か?フロアで指導しながらモノ食ってるとは何事だ!」と感情を押し殺そうにも抑え切れずに声を荒げたのです。

 

こちらはというと、ぽかん。
です。

 

え?え?なに?

「何も食べていません」あまりの威圧感に気圧され、21歳のわたし、そういうのが精一杯。

 

「じゃぁ、なんでそんなに頬がふくらんでるんだよ!」

 

えーーーー。

(も、もとからシモブクレじゃないですか・・・)といえる雰囲気はもはや1ミクロンもありません。

 


その1年前の夏休みに、いとこが運営する北海道のユースホステルで住み込みバイトをしていたのですが、ついたあだ名が「ジョー」。
ちょっとかっこいいでしょう?
ほっぺが宍戸錠に似ているとの理由で、毎日イジられていました。
わたしより後から入ったバイトの人は、先輩たちとのやり取りを見て何の疑いもなくわたしの苗字だと確信し「城さん」と呼んでいました。


そんなことが走馬灯のように駆け巡り、「口には何も入れていません」と震えながら答えます。

 

「じゃぁ口を開けてみろよ!」

 

(えーーまじでいってんの。これ、逆に何か入ってた方がすんなり話が終わるんじゃね?
ど、どうしよう。とりあえず、開けるしかないか。)

「あ、あーん」

 

「うん?うん?さては、おまえ隠しただろ。」


「いえ!」

 

「あ、わかったぞ、おまえ、いま、下アゴに入れただろ!! 膨らんでんだよ。見せてみろ」

 

(まじでいってんの・・・。下アゴに食べ物隠すって何の動物だよ。こんなところに貯蔵できるかっつーの。しかも上アゴとかないし。)


左右の頬をめくるようにして中を見せ、上下のクチビルもめくり舌も上下左右に動かし、ずべてをさらけだす21歳のわたし。
もう、いろいろ恥ずかしい。

本当に何も入っていないことがわかると、不思議そうにわたしの顔をじっと見つめるSコーチ。

(もしかして最初からふくらんでるだけだったのか・・・?)

Sコーチの心の声が聞こえる。

 

なぜか、わたしよりも耳を真っ赤に染めているSコーチは、引き下がれなくなったのかさらに大声で迫ってきた。

「おまえ、いま、飲み込んだろう!!!」

(おいおい、もう、勘弁してくれよ・・・。飲んだところで、まだ頬もアゴもパンパンじゃないか。)

「の、飲んでいません」

「いや、飲んだな」

「飲んでません」

「いや、飲んだ。

目を瞑るのは今回だけだからな!気をつけろよ!」

(おまえがな!!!)

 

Sコーチは捨て台詞を吐いて、ジムフロアを去っていきました。

この不毛なやりとりを見ていたKさんは「なんかSさんの方が気の毒だったな」とため息まじりにつぶやきました。

なんで、そうなるのよ。
これが、自分史に刻まれた飲んだ飲まない事件の話です。


ね。下アゴも、主犯格のクチビルに負けない、なかなかのヤンチャエピソードを持っているでしょう。


というわけで2回に渡り長くなりましが、アロハ(むすめ)は、父親似のまま大きくなってほしいのです。

 

今日もアロハにクチビルや二重アゴをペチペチ叩かれました。
目立って気になるようで、ちょうどいい遊び道具のようです。
もう少し大きくなったら、取ってつけた道具じゃなくてお母さんの自前ってわかるかな。


お母さんは顔で語れる女です。

 


にこっ。愛愛。