九份に一生を得る

  • 2020.06.04 Thursday
  • 21:36

JUGEMテーマ:台湾


突然ですけど、人生の中で一度でいいから人に言われてみたい台詞ってありますか?
わたしは、ありました。
過去形であるのは、とうとう3年前に人から言われ、願望を叶えられたからです。

一生こんな言葉を放たれる場面には遭遇しないと思っていました。

だって、
「ここは俺に任せて、おまえは先に行け!!」ですよ。
実際はもう少し丁寧な言い方でしたけど。
こんな台詞、アドベンチャー映画かアクション映画でなければ使わないですよね。
だから、よけいに憧れがあったのかもしれません。


話は飛行機に乗って飛びますが、3年前に台湾ひとり人旅をしました。
桃園空港に到着し、まずは電車(MRT)でポータル駅の台北駅へ。
ここで、電車の1日フリーパスを買い、地下鉄に乗り換えてホテルにチェックイン。

わたしは漢方養生指導士の資格を取っているので、漢方街とよばれるエリアで調剤のちょっとした勉強をさせてもらったり、
完熟マンゴーかき氷を味わい、パウダースノウのようなサラサラの白い粉にぶっ飛んだり、
山の頂に現れる、提灯が美しい古い街並み(九份・きゅうふん)で台湾式のお茶をいただいてぼったくられたりと、とにかく台湾を満喫しました。

九份は、千と千尋の神隠しの舞台ともいわれる艶やかな景色が広がりますが、観光客でごった返していて写真を撮るのに手こずり、あっという間に終バスの時間になってしまいました。
帰りの高速バスの行き先はまちまちで、路線によって東京駅と千葉駅くらい離れており、どのバスが横浜駅=台北駅に寄るのかわからず、大苦戦。
インチキ英語とインチキ中国語で数人に話しかけるも、お互い、ちょっと何言ってんだかわからないんですけど…となり、5分で最終手段に出ました。

「すみませーん!日本語わかる方ぁ!台北駅に行くバスを教えてくださーい!」
と叫んだのです。

驚くことに、わたしが話しかけた数人以外はほぼ日本人で、周りの人たちがまちまちに
「あっち、あっち!」
「道路渡って反対側の少し下ったところぉ!」などと教えてくれました。
感謝、感謝。というか、これだけ日本人がいて、よくぞそれ以外の人だけチョイスして話しかけてたなとある種の奇跡を見ました。

最終日は、これ以上の奇跡が起こります。

海外旅行をすると、必ず現地の紙幣や小銭があまってしまうので、今回は旅の最後に台北駅近くのスーパーに寄り、台湾ドルをギリギリまで使いました。残りは50元。

フリーパスを買ってあるので、あとは電車で桃園空港に戻るだけ。
しかし、改札機にフリーパスを何度通しても抜けられないのです。
窓口で訴えてみると、英語でサラッと何か説明されたあとに、コレ、ツカエナイと言われました。
ここで、エゲツないことを思い出します。
桃園空港から台北駅までの電車は、フリーパスの範囲外だったのです。値段は150元。日本円にして約600円。
だから、行きも台北駅に着いてから購入したのでした。

お、オワターー。
帰りの飛行機のチェックイン締め切りまであと1時間。ノーマネーでフィニッシュです。

窓口の係員に日本円で1000円持っているから、両替してほしい。チケットを買いたいと半泣きで頼み込みますが、ノーノー、ダメ、ダメ!の1点張り。

まずい。誰かどうにかにして日本の1000円と台湾ドルを両替してくれぇぇい。
時間がないので、九份での経験を生かしすぐさま最終手段に出ます。
「どなたかぁ、日本円を台湾ドルに替えてくださいーー!」
叫んでみますが、誰も目を合わせてくれません。九份にあれだけいた日本人どこ行っちゃったのよ。

焦って、鶴屋町界隈にいるようなキャッチの兄さんのように、片っ端から話しかけます。
「アーユージャパニーズ?」
みんなノー。聞き込みの合間に「どなかたかぁ〜」と叫びまくります。
反応がなく心が折れそうになったとき、ついに救世主が現れたのです。
「はい、はい、はい、日本人をお探しですか?」
うぉーービジネスマン風の日本人のおじさま!
助かったーー!!

「わたし超マヌケで空港までフリーパスが使えると思って台湾ドルを使い切ってしまって…。チケットが買えないんです。1000円札なら持っているので台湾ドルと交換していただけませんか?」

「えー!」

おじさまは、同情するような、安心したような、困ったような、恥ずかしそうな、なんともいえない表情でこう言いました。

「奇遇ですね。まったく同じ状況です!」

あんたもかーーーい!
これって奇跡。

しかし、おじさまはこう続けます。
「ツアーできているので、コンダクターにお金を届けてほしいとお願いしたんです。まだだいぶ時間がかかるんですけど、来たらいっしょに両替できますよ」

助かった、と思いきや、コンダクターが到着するのは20分後。チェックイン時間に間に合わないかもしれない。
おじさまも時間までにコンダクターが無事に到着するか不安そうだ。

「あ、小銭は使い切ったんですか?」とおじさま。
「50元だけあるんですけど」
おじさまが財布から、じゃらじゃらと小銭を出す。
「これを足せば1人分になります」
本当だ…。
おじさまはその小銭をわたしに差し出し、「わたしはコンダクターが来るから、これで先に」と。
「で、でも」
「早く行った方がいいですよ」
「いやぁ、でも…」

「時間がない。ここはわたしに任せて、あなたは先に行ってください!!」

キターーーー!

これ、これ、これ!
「ここは俺に任せて、おまえは先に行け!!」の丁寧版。
うわぁ、言われた〜。唐突に言われた〜。
思ってたんとぜんぜん違うけど言われたーー!

「は、はい!すみません。助けてくださって本当にありがとうございます。どうかご無事に帰れますように」

お互い、good luck!的な顔をして別れ、わたしはありがたみを感じながらチケットを買い、電車に飛び乗りました。
フライトがかなり遅れていたこともあり、無事に帰りの飛行機に搭乗することができたのです。
おそらくおじさまも同じ飛行機だと思うので、無事に乗れたはず。
旅の神様が、親切なおじさまのためにフライトを遅らせてくれたのかもしれません。
その節はお世話になり、ありがとうございました!

こうして、わたしの願望は叶ったわけですが、もういちど言われてみたい、とは思いません。
この台詞が飛び出すときは、どう考えても危機的状況なので。

今、人から言われたい言葉といえば、「トムクルーズにインタビューをお願いします!」
かなぁ。単なる仕事の依頼じゃん。

でもこうなると、日常会話レベルの英語を身につけることがミッションになりますね。
どうにもならない場合は、また「どなたかぁ通訳できる方ーー!」と大きい声を出したいと思います。


にこっ。

愛愛。